130歳以上生きると考えた時、生涯自分の歯を残すことはとても重要です。
健康長寿のために歯に関する本を多数読み、また、担当の歯科医や歯科衛生士さんともお話し、「歯の重要性」、「生涯歯を残すためにできること」、そして「歯を失う意外な盲点」も見えてきましたのでまとめます。
結論を先に言いますと、歯の喪失や歯周病は、
- 糖尿病
- 心疾患
- アルツハイマー病
- がん
- 転倒等
に関連しておりめちゃくちゃ重要です。そして、歯を失わないためには、歯の喪失原因のほとんどを占める以下の3つの対策をしっかりとればOK。
- 「歯周病」
- 「むし歯」
- 「破折」
この対策をしていれば、自動的に健康的な歯が手に入ります。
そして、歯を失わないためには、耳慣れない言葉ですが「TCH(Tooth Contacting Habit)」にも注意しなければなりません。
それでは歯の重要性と歯を失わないためにできる対策を詳しく見ていきましょう。
参考にした書籍論文ホームページ等
ホームページ
※1日本歯科医師会 テーマパーク8020 https://www.jda.or.jp/park/relation/teethlife.html#3
※2日本臨床歯周病学会HP 「歯周病が全身に及ぼす影響」 https://www.jacp.net/perio/effect/
※3厚生労働省 eヘルスネット 「口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-01-006.html
※4(公財)8020推進財団 「第2回 永久歯の抜歯原因調査報告書(2018年)」 https://www.8020zaidan.or.jp/pdf/Tooth-extraction_investigation-report-2nd.pdf
書籍
※5 100歳まで自分の歯を残す4つの方法 改訂新版 齋藤博/著 木野孔司/監修 ヨシタケシンスケ/イラスト Amazon 楽天
※6 自然治癒力が上がる食事-名医が明かす虫歯からがんまで消えていく仕組-小峰一雄/著Amazon 楽天
※7 進化する歯科のチカラ 歯科医療最前線で闘う12人のプロフェッショナル 単行本(ソフトカバー)木下 英明 (著), 廣田 祥司 (著) Amazon 楽天
※8 あなたの人生を変えるスウェーデン式歯みがき-1日3分・ワンタフトブラシでお口から全身が健康になる!-(JK MOOK) 梅田龍弘/著 Amazon 楽天
※9 歯のメンテナンス大全-人生100年時代の正しいデンタルケア88のリスト-堀滋/著 Amazon 楽天
※10 世界の一流はなぜ歯に気をつかうのか-東京医科歯科大学を首席卒業した名医が教える 科学的に正しい歯のケア方法- 森下真紀/著 Amazon 楽天
※11 朝起きすぐの歯みがきで、一生病気知らず(講談社の実用BOOK)長野志津男/著 Amazon 楽天
※12 朝、起きてすぐの歯みがきが、あなたを守る 川合満/著 Amazon 楽天
論文
※13 Stephen S. Dominy et. (23Jan2019) “Porphyromonas gingivalis in Alzheimer’s disease brains: Evidence for disease causation and treatment with small-molecule inhibitors” SCIENCE ADVANCES https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aau3333
歯と長寿・病気の関連
まずは歯が健康長寿や病気の予防にとって、いかに大切か、ということを見ていきたいと思います。
百寿者の特徴の多くが食生活と関連している
百寿者について調べていますと、日常生活の特徴として、食事についての記述が非常に多く出てきます。
例えば百寿者は
- 野菜をよく食べる
- 果物をよく食べる
- よく噛んで食べる(咀嚼回数が多い)
- 1人ではなく、家族等、誰かと一緒に食べる
これらは非常に重要な要素であることは確実です。
上記の特徴に共通するのが、「食生活」に関することだということです。
これには「よく噛める歯がある」ことが欠かせません。
歯の本数と転倒
歯が「19歯以下で入れ歯を使用していない人」は、「20歯以上保有している人」と比較し、転倒するリスクが2.5倍になることが示されています。
また、統計的に有意差は出ていませんが「19歯以下で入れ歯を使用している人」も平均で転倒リスクが1.36倍になっていました。
(※1日本歯科医師会 テーマパーク8020より)
歯周病と病気の関係
歯周病は口の中で常に炎症状態が続く状態です。
炎症によって出てくる毒性物質が歯肉の血管から全身に入り、様々な病気を引き起こしたり悪化させる原因となります。
炎症性物質は、
- 血糖値を下げるインスリンの働きを悪くさせる(糖尿病)
- 早産・低体重児出産
- 肥満
- 血管の動脈硬化(心筋梗塞・脳梗塞)
にも関与しています。(※2日本臨床歯周病学会HP 「歯周病が全身に及ぼす影響」より)
長寿関連を調べていると、「炎症」と聞くと反応してしまいます。。
また、歯周病菌のなかには、誤嚥により気管支から肺にたどり着くものもあり、高齢者の死亡原因でもある誤嚥性肺炎の原因となっています。(※2より引用)
歯周病菌のひとつジンジバリス菌(Porphyromonas gingivalis)がもつ”ジンジパイン”というタンパク質分解酵素はアルツハイマー病悪化の引き金となる可能性が示唆されています。(※2、※13より)
私は歯周病がアルツハイマー病の原因の一つと考えています。
また、厚生労働省のHPによると歯周病は以下の疾患とも関連していると言われています。
- 慢性腎臓病
- 呼吸器疾患
- 骨粗鬆症
- 関節リウマチ
- がん
(厚生労働省 eヘルスネットより)
これらの証拠が次々と出てきていることから、歯が不健康であることが全身の不健康につながることはほぼ確実と私は考えています。
歯と病気の関連はとても多くの本に記載されており、歯の重要性が分かります。
健康で長生きするために、歯の健康を保つことが重要ですし、130歳以上生きるためにも生涯歯を失いたくありません。
歯を失う原因
歯を失わないためには、失う原因を一つずつ潰していけば良いです。
失う原因を潰していくことで、自動的に歯の健康も保たれます。
では、歯の喪失原因を見ていきましょう。
次の図は8020推進財団の「永久歯の抜歯原因調査」(2018年)による、歯の喪失原因の内訳を示しています。
歯が失われる原因を多い順で示すと、以下の通りになります。
- 歯周病(37%)
- むし歯(う蝕)(29%)
- 破折(18%)
- その他(8%)
- 埋伏歯(5%)
- 矯正(2%)
ここから分かるように、歯の喪失を防ぐには、主に、「歯周病」、「虫歯」、「破折」に対応していく必要があります。
破折ってなかなか聞きませんよね。「破折」とは歯に加わる力で歯にヒビが入り割れてしまうことです。
それぞれの項目について、歯を失わないための対策と考え方を見ていきます。
歯を失わないための対策
歯周病・虫歯の対策
歯の喪失原因の第1位と第2位の「歯周病(37%)」と「むし歯(29%)」を防ぐことができれば対策の半分は終了です。
歯に関する書籍全てに共通していることですが、歯の健康を守るためには歯科医院で行うプロフェッショナルケアと自宅で行うセルフケアがめちゃくちゃ重要になります。
プロフェッショナル・ケア
当たり前ですが、歯医者に3-4ヶ月に1回通い、PMTC (Professional Mechanical Tooth Cleaning) で歯石をとってもらいます。
これは国民の義務です。法律もあるので従ってください。
(冗談ですが本気です)
定期的に歯科医に通わないことは、歯の健康を軽視していて、あり得ないレベルのことだと思います。
すぐに歯科医院を探して予約の電話を入れましょう。
歯医者選びの基準・探し方は以下で詳しく書いています。
セルフ・ケア
歯周病、虫歯予防でメインになる部分で、自宅での歯ブラシ等によるケアです。
個人個人に合ったやり方があると思いますので、歯科衛生士さんと相談して進めると良いと思います。
私の歯みがきセット
私は歯みがきで以下のものを使用しています。
- 歯ブラシ
- 歯間ブラシ
- ワンタフトブラシ
- フロス(1箇所だけ)
- 歯垢染色剤(月1回)
電動歯ブラシは音がうるさいため耳に悪そうなので使用していません。高齢になって難聴になるのが嫌なので、うるさいものはなるべく避けています。
歯みがきのポイント
以下で紹介するポイントは書籍等で勉強する前は知らなかった内容です。
歯科衛生士さんに聞いた歯みがきのコツや、本で読んだこと(主に※5の「100歳まで自分の歯を残す4つの方法」)で、私が取り入れているポイントです:
①歯みがきは細かく動かす
歯ブラシを大きく動かしてしまうと、歯と歯の間の歯垢が取れません。
実際に歯ブラシを動かす幅は3mmくらいが良いです。
しかし、感覚ですと1mmくらい動かす感じでちょうど良いです。
私の場合、1mmぐらい動かす感覚で、実際にはちょうど3-4mm動いています。
また、歯ブラシを動かすというよりは、歯ブラシを歯に当てて揺らす感覚の方が近いです。
②力を入れ過ぎない
過度のブラッシングは歯と歯肉を痛めます。特に1日何回も歯みがきをする場合、間違ったブラッシングは深刻なダメージになります。
歯ブラシは過度な力が入らないようにするには、柔らかい毛先の歯ブラシを2本指でペンを持つ要領で持ち(ペングリップ)、軽く歯と歯肉の境に押し込むようにしてみがきます。
ペングリップですと、かかる力は100から150グラムになります。
試しにキッチンスケールで測ってみましょう。
③今、どの歯をみがいているかを意識しながらみがく
1本ずつ丁寧にみがいていきましょうということです。こうすることで歯垢の除去効率にかなり違いが出ます。
④1本の歯に対して歯ブラシを細かく20往復させ、次の歯に移動、これを繰り返す。
ブラシの先を歯にあてて細かく20往復させるとそのくらいで歯垢が取れます。
⑤ワンタフトブラシで歯と歯の間をみがく
ワンタフトブラシは歯と歯の間や歯並びが悪い箇所、親知らずが中途半端に生えている箇所をすごく効率よく綺麗にみがくことができます。
私の担当の歯科衛生士さんもすごくオススメしていましたので、詳しく知るために以下の本を読んで勉強しました。
日本では「ワンタフトブラシ」はあまり馴染みがありませんが、スウェーデンをはじめ予防歯科先進国では普通に行われています。
実際に取り入れてみてわかったのですが、歯と歯の間の歯垢がかなり綺麗に取れています。
歯垢染色剤で確認すると効果がわかりますが、歯ブラシだけで歯の間の歯垢をきれいに取るには結構チカラをかけないといけないのです。しかし、ワンタフトブラシだと少ないチカラでみがけて歯肉を痛めません。
ちなみにこの本を買うと、付録としてワンタフトブラシがついてきますので、ちょっと試してみたいという方にはオススメです。
歯垢染色剤は効果抜群
もう一点、かなり重要なポイントとして、私は月に1回、歯垢染色剤を使いみがき残しを確認し、PDCAを回しています。
セルフケアのクオリティを上げるのはこれが1番大事かもしれません。
歯垢染色剤で歯みがきの技術がかなり上がります。
みがき残しがないように練習していると、勝手に技術が上がっていき、歯ブラシを細かく動かすとかもできてくると思います。
破折の対策
歯の喪失原因第3位(18%)の「破折」です。
「破折」とは歯に加わる力で歯にヒビが入り割れてしまうことです。
破折で抜歯になるのは、ほとんどの場合すでに神経を抜いてもろくなっている歯ですので、虫歯の対策をしっかりしていればリスクを大幅に減らすことができます。
また、破折は消耗しない「詰め物」によっても起こる場合があるそうです。
通常、歯は5年、10年単位ですり減って消耗してきます。しかし、銀歯はすり減らないので、時間とともに周りの歯だけが消耗し、銀歯だけが相対的に高くなります。その結果、銀歯だけがかみ合わせが強くあたり、歯が割れることがあります。「セラミック」にはすり減る素材もあるようですので、詰め物をするときに確認してみてはいかがでしょうか。(※7より)
さらに、破折は「TCH」により起こることがありますので、こちらもしっかり対策する必要があります。
TCHの対策
TCHの対策を取ることは「破折」予防以外にも、歯を失わないためにはめちゃくちゃ重要になります。こちらは勉強するまで盲点でした。
TCHとは
Tooth Contacting Habitの略で、無意識のうちに上下の歯をつける癖です。
通常上下の歯は接触せずに、数ミリほど空いているのが正常な状態です。
1日に上下の歯が接触して良い時間は食事時間も含め約20分といわれています。
しかし、上下歯列を無意識にくっつけている癖であるTCHの状態では日常的に上下の歯が接触した状態が続き、歯や歯周組織に常に負担をかけ続けます。
従来、丁寧なブラッシングと歯科医による定期的な口腔ケアを受けていれば、歯を失わないと言われてきましたが、「ケアができている状態」でもTCHがあると歯を失うということが分かってきました。
実は私もTHCでした。しかし、書籍「100歳まで自分の歯を残す4つの方法」を読み、その存在に気づき、現在は改善しています。
130歳以上になっても歯を残すためには、TCHは確実に改善しておく必要があります。
TCH判定法
①唇を軽く接触させた状態で上下の歯が接触しないように1〜2ミリ離してください。
この時、口の周りに違和感があればTCHがあります。
②違和感がない場合は、歯をつけない状態を5分間維持できるかどうかを想像してください。
できそうにないと思ったら、TCHがあります。
TCHの改善
改善方法はとても簡単です。私もこの方法で改善しました。
- 「歯を離す」という付箋を至る所に10枚以上貼り付ける。
例:テレビ、洗面所、会社のパソコン、トイレ、冷蔵庫、寝室、等々長く時間をすごす場所に貼り付けましょう。 - 付箋を見る度に歯を離す。
- 普段から上下の歯が触れていると感じた際には、歯を離すようにする。
私の場合、これを1ヶ月程度続けるとTCHが改善しました。
TCHが改善すると上下の歯が触れていることの方が逆に違和感を感じ、気持ち悪くなってきます。
この状態になれば、もう付箋は不要になります。
歯の喪失の大きな原因となるTCHは、確実に改善しておきましょう。
TCHについて詳しく知りたい方はこちら。
歯周病、虫歯、破折 以外の原因への対策
歯の喪失原因として、
- その他(8%)
- 埋伏歯(5%)
- 矯正(2%)
が残りました。
矯正(2%)については、予定がないので気にしていません。
埋伏歯(5%)についても私は親知らずをすでに抜いていますので、気にしません。
その他(8%)については、調査報告書を見る限り、ほとんどが、親知らずでの抜歯原因になっていました。
親知らずでの半埋伏歯や何らかの他の原因が関連しているのかもしれません。
こちらも親知らずを抜いてしまっていますので気にしないことにします。
半埋伏歯は汚れが溜まりやすいことから、細菌感染による炎症が周囲の歯や歯肉まで生じやすくなります。
そのため、親知らずを抜歯してしまうことが多いと思います。
しかし、しっかりプラークコントロールできていると抜歯する必要は一切ないということが、勉強していてわかりました。
半埋伏歯でもワンタフトブラシを使用することでかなり綺麗にみがくことができますので、使用していない方はおすすめです。
抜歯してしまうと、その部分が空洞になり細菌が溜まる「ボーンキャビティ」が発生する可能性があります。
ボーンキャビティが発生すると、そこで繁殖した菌や毒素が体に悪影響を与えることが分かってきました。(「自然治癒力が上がる食事 名医が明かす虫歯からがんまで消えていく仕組」より )
そのため、現時点の知識がある状態であれば、親知らずが半分埋まっている状況でも絶対に抜歯はしていなかった思います。少し悔しいです。
なにはともあれ、以上で歯の喪失原因の全てを潰せました。これで生涯歯を失うことはないと信じたいです。おっと、あとは転んで歯を折らないように気をつけます。
まとめ
歯の喪失や歯周病は、
- 糖尿病
- 心疾患
- アルツハイマー病
- がん
- 転倒等
に関連しており、とても重要です。
歯を失わないためには、歯の喪失原因のほとんどを占める
- 「歯周病」
- 「むし歯」
- 「破折」
の対策をしっかりとりましょう。
歯の喪失の原因となる「TCH」にも注意が必要です。
因みに今回読んだ本の中で私が一冊だけおすすめするとしたらこちら。TCH以外にも障害歯を残すためにできることが1冊で学べます。(家族にもプレゼントしました笑)
以上、しっかり対策をして生涯健康な歯を手に入れましょう。
因みに、私はこれらのことを実践してから、歯科衛生士さんに「プラークコントロールが完璧にできている」と言われるまでになりました笑