オメガ6不飽和脂肪酸(以下、オメガ6 or オメガ6脂肪酸)は炎症を引き起こすので、それが多く含まれる植物油の取りすぎは体に悪いと思っている方は多いのではないでしょうか。
それに関して、医師のDr. Gil Carvalho氏がYou Tubeでまとめてくれていました。大変参考になりましたので紹介します。
結論から言いますと、オメガ6脂肪酸は炎症を起こさないので、取り過ぎをそこまで気にしなくても良いのではないかということです。
YouTubeの紹介
オメガ6脂肪酸が含まれる様々な油を使った研究
ビデオでは、様々な油を使ったヒト対象の臨床試験やメタアナリシスの論文を紹介しています。(かなりの数です(‘◇’)ゞ)
それらの論文では、オメガ6脂肪酸が少ないオリーブオイルやキャノーラ油からオメガ6が多い大豆油やサフラワー油などを一定期間使って、CRPやIL6等の炎症マーカーの変化を確認しています。
これらの論文では、オメガ6脂肪酸の摂取増加により炎症マーカーが増加したという結果がことごとくありませんでした。
(参考文献は概要欄にリストしてあります。)
オメガ6が悪いと考えられる理由
では、なぜオメガ6が炎症性であると悪者にされてきたのでしょうか。
理由は以下の機序のように、植物油のオメガ6の主要成分であるリノール酸が炎症を促進する物質に変化すると考えられているからです。
リノール酸(オメガ6)
↓
アラキドン酸(オメガ6)
↓
プロスタグランディンやロイコトリエン等の炎症メディエーターが誘導され、炎症を誘起する。
「上記の理由で、オメガ6が含まれる植物油を多く取ると体に悪い」という理論です。
これはグーグルで検索すると、様々なサイトに載っていますし、病院のHPなどでも記載されています。
確かに信憑性がありそうですが、本当でしょうか。
これに対していくつか意見があります:
①アラキドン酸は多く作られない
まず、炎症を促進すると言われているアラキドン酸の生成は厳密に調整されており、リノール酸を多く取ったとしても多量に生成されることはありません。
(参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21663641/)
上記のレビューでは、リノール酸(LA)の摂取を最大6倍(プラス約12g/day)にしてもアラキドン酸(AA)の濃度(血漿/血清)の有意な相関はありませんでした。
つまり、↓
リノール酸
↓×
アラキドン酸
②アラキドン酸から炎症を抑える他の物質も出来るかもしれない
次に、アラキドン酸から炎症を促進する物質だけが誘導されているとは限らないということです。
実際にオメガ6が多く含まれる油を多くとっても炎症は起きていませんので 炎症促進物質だけが作られるわけではないかもしれません。
まとめると、上記のようなストーリーでオメガ6不飽和脂肪酸は炎症を起こすと悪者扱いされていることが多いですが、エビデンスを見るとオメガ6を多くとっても炎症は起きていません。
ストーリーに惑わされずに実際の結果・エビデンスに注目する必要がありそうです。
オメガ3とオメガ6の比
「オメガ3 オメガ6 比」で、グーグル検索すると病院や、NHKのサイトでさまざまな情報が出てきます。
それによると血中EPA(オメガ3)/AA(アラキドン酸・オメガ6)の比率のバランスが崩れると心疾患などのリスクが上昇することが分かってきたとのことです。
https://www.tanaka-cl.or.jp/aging-topics/topics-092/
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1128.html
これらによると、なぜか分かりませんがオメガ3単体よりリスクに相関しているようです。
前述の、リノール酸(オメガ6)をとってもアラキドン酸(オメガ6)が上昇しないというレビューをもとに考えると、オメガ6を抑えるよりオメガ3の摂取を増やす必要があるようです。
要は魚を食えということですね。
オメガ6を大量に取りすぎることは良くないかもしれませんがね。
EPA/AA比は健康を維持するためには0.6以上が必要とも言われています。(参照)
そして私のEPA/AA比がこちら:
0.78で、見事0.6をクリアでした!
コレステロールの関係で循環器内科に測定してもらっていました。
2021年2月の測定当時、魚は2日に1回食べていました。
当時、LDLコレステロールは基準値オーバーの170 mg/dLでしたが、EPA/AA比は基準値以上。
私の場合、飽和脂肪酸が多く含まれる赤身肉や鶏肉を減らして、代わりにオメガ6が多い大豆製品(油揚げ・豆腐・納豆)を増やすとLDLコレステロールは100 mg/dlまで下がりました。
EPA/AA比はその後測定していないので分かりませんが。
心血管疾患予防にはオメガ6の取りすぎを気にするより、飽和脂肪酸を減らしたほうがよさそうです。
因みに、魚の摂取頻度は2日に一回のままで変えていません。
今後の方針
- これまでオメガ6不飽和脂肪酸が多く含まれている油(ごま油等)は控えていた。
しかし普段使いで多く使用しなければあまり気にする必要はない。 - 今後も赤身肉等の飽和脂肪酸摂取を制限していく。 飽和脂肪酸の代わりにオメガ6が増えても気にしない。
- 健康に良いというエビデンスが確立されている地中海式ダイエットに使うオリーブオイルや沖縄の長寿の人々が使用している菜種油は引き続き普段使いで使っていく。
(オリーブオイル・ナタネ油は健康に良いとされるオメガ9不飽和脂肪酸が豊富に含まれている) - 豆腐や納豆等の大豆製品はオメガ6が多い大豆油が含まれるが、健康に良いというエビデンスも多く、長寿の沖縄の方々も大豆製品はたくさん食べているので、今後も気にせずたくさん食べる。
- これまで養殖の魚は餌が穀物のためオメガ6が多く、摂取を控えていたが、そこまで気にする必要はないかもしれない。しかし、天然物の方がオメガ3が多く含まれているため、より健康に良いと考え、引き続きなるべく天然物を選択するようにする。
- 養殖の魚は抗生物質が入っていて健康に悪いという説があり心配ではあるが、科学的にどの程度健康に影響するのかはわからない。
(養殖の鮭も美味しい。) - オメガ6を気にしないと言っても、外食・惣菜等の古い酸化した油やジャンクフードの油には気をつける。
まとめ
- 様々な研究から、オメガ6不飽和脂肪酸の炎症はそこまで気にしなくても良い。
- 心血管疾患予防にはオメガ6の取りすぎを気にするより、飽和脂肪酸を減らしたほうがよい。
今後も心血管疾患を確実に予防してまいります。