百寿者研究の第一人者である慶応大学の新井 康通先生と 広瀬 信義先生の記事がかなりおもしろかったので紹介します。
110歳を超えて生きる方の特徴として日常生活動作(ADL)の自立があるというのです。
100歳、110歳と生きていく上で非常に重要なデータですのでまとめました。
そのうえでどうすればよいか考えたいと思います。
日本内科学会雑誌 109 巻 3 号 p427の記事になります。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/3/109_427/_pdf
まとめると
110歳まで生きた人は100歳時点で日常生活動作(ADL)が自立している。
⇒100歳になっても日常生活機能を保つことが超重要
日常生活機能を保つには
・認知機能を保つことが超重要
・フレイルにならないことが超重要
・サルコペニアは、加齢に伴う骨格筋量と骨格 筋機能が低下した状態であり、フレイルの原因となる。
詳しく見ていきます。
110歳以上生きたスーパーセンチナリアンは100歳時点での日常生活機能が保たれている。
642人の100 歳以上の高齢者を死亡年齢により100~104歳 (狭義の百寿者)群,105~109歳(超百寿者) 群ならびに110歳まで到達したスーパーセンチ ナリアンの3群に分類し,ADL(日常生活動作)を比較した(図 1)2).
その結果、100歳時点におけるADLは、 スーパーセンチナリアン、超百寿者、百寿者の 順に有意に高く、さらに、105〜109歳時のADL もスーパーセンチナリアンの方が超百寿者より も高かった.
つまり、ADLの自立度が高い方が 100歳以降の寿命も長く、110歳以上まで到達 したスーパーセンチナリアンは、100歳時点で の自立度が極めて高いことが明らかとなった.
また、沖縄の百寿者研究でも,
110歳以上まで生存した12名のスーパーセンチ
ナリアンは,100歳時点のADLはほぼ自立して
いたことが報告されている。
→100歳になっても日常生活機能を保つことが超重要
日常生活動作(ADL)の自立を保つために
日常生活動作(ADL)の自立と認知機能には強い関連性がある。
百寿者群,超百寿者群ならび にスーパーセンチナリアン群の3つの百寿者群 で,ADLの自立を規定する要因について検討し た結果,3つの群で共通して認知機能(MMSE (Mini-Mental State Examination))がADLの自立 と強く関連した.
→ 何歳になっても認知機能を保つことが超重要
高齢者の自立の喪失・要介護の要因としては、認知症と共にフレイルが重要である.
フレイルとは
加齢に伴う臓器予備能の低下により、 全身のストレス耐性が低下した状態を指し,身体的・精神心理的・社会的な側面を統合した概 念である.
フレイルは長寿と関連する。
Chinese Longitudinal Healthy Longevity Survey(CLHLS)では,4,434 名の百寿者と65~79,80~89ならびに90~99 歳の各年代の高齢者14,051人を対象として,フ レイル指数を評価した6).
その結果、フレイル 指数は年齢と共に上昇し,百寿者では最もフレ イル指数が高いことが判明した.
さらに,フレイル指数は,百寿者を含む全ての年代で、総死亡率、ADL障害ならびに認知障害と有意に関連 し、健康長寿の重要な阻害要因であることが示 された.
慶応大学の研究でも(狭義の)百寿者群,超百寿 者群ならびにスーパーセンチナリアン群の3つ の百寿者群で,100~104歳時におけるフレイ ル指数を比較したところ,スーパーセンチナリ アン群でフレイル指数が最も低く,フレイルの 発症を遅らせることが健康寿命の延伸につなが る可能性が示唆された7)
→長寿のためにはフレイルにならないことが超重要
フレイルにならないために
サルコペニアは、加齢に伴う骨格筋量と骨格 筋機能が低下した状態であり、フレイルの原因 として重要である.
ポルトガル の百寿者253名を対象とした研究では.サルコペニア群では,下肢運動機能の低下リスクが 2.2倍も高く,百寿者においても,筋肉量の減少 が下肢運動機能低下と密接に関連していること が示された.
muscle mass indexの減少は,低 BMI,骨密度の低下ならびに過去の低身体活動 とも相関を認め,超高齢期における体重と身体 活動の維持がサルコペニアの予防につながる可能性が示唆された.
→いかにフレイル・サルコペニアを予防・遅延し,介護予防につなげるかが重要になる.
炎症指標は長寿との関連
著者らは,百寿者研究の結果から,加齢 に伴う慢性炎症(inflammaging)がフレイルの 基礎病態として重要であると考えている.
百寿 者684名(そのうち超百寿者387名,スーパー センチナリアン22名)とその直系子孫と配偶者 167組,85歳以上の高齢者535名を対象に,貧血,肝機能,腎機能(eGFR(estimated glomerular filtration rate)),脂質・糖代謝,炎症指標 (サイトメガロウィルス抗体価,CRP(C-reactive protein),IL(interleukin)-6ならびにTNF(tumor necrosis factor)-αの4因子から求めたZスコア) ならびに白血球テロメア長等の加齢に関連する 血液バイオマーカーを測定し,健康長寿の指標 との関連を検証した12).
その結果,炎症指標が 85歳高齢者,百寿者群ならびに超百寿者群の3 つの年齢群の生命予後と有意に関連した(図 3)13).
炎症と長寿の関係はこちらにも記載されています。
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/medical_info/science/201604.html
また、炎症指標は、全ての年齢群でADL、 認知機能とも有意な関連を示した.
さらに,炎症指標は,貧血(ヘモグロビン値)や低栄養(ア ルブミン値)よりもフレイル指数と高い相関を 示し(図4)14),慢性炎症がフレイル発症の分子基盤として健康長寿を阻害している可能性を示した.
この研究によると、健康であるときは慢性炎症が抑えられ、死期が近づくにつれ炎症反応が大きくなり最終的に死亡すると考察されています。
以下論文のDiscussion参照
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4634197/
何をすればよいか考える。
全ては運動に通ずるかも。
ここからは私の考察です。
慢性炎症がフレイルの直接原因ではなく、運動不足(身体活動低下)の指標ではないか。
真のフレイルの原因は運動不足(身体活動低下)による筋力の低下ではないかと思います。
つまり
運動不足⇒慢性炎症
かつ
運動不足⇒筋肉がつかない⇒フレイル⇒日常生活機能が保てない⇒死亡
(参考:運動が身体の炎症・老化を抑制するメカニズムを解明 骨に加わる力が炎症を抑制、元論文「Mechanical regulation of bone homeostasis through p130Cas-mediated alleviation of NF-κB activity」)
https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2019/008652.php
慢性炎症が発生してくると死期が近いということのようなので、それが発生する前に早め早めに対処していく必要があると感じました。
運動と老化・健康についての研究はたくさんありますよね。
結局運動・活動しなくなったら死期が近づく、と考えます。
沖縄の元気百寿者の調査をまとめた「オキナワ式食生活革命―沖縄プログラム」という本にも、元気な百寿者は庭での野菜作りなど、かなり活動的に動いているようです。
やはり一日1万歩を続けていきます。
自分のおばあちゃんの話を聞いていると、体が痛くて出かけたり運動する元気がないと話しています。
活動的に過ごすには友達や地域とのつながりがとても大事だと思います。
それがモチベーションにつながり体の痛みがあっても出かけたりもしますからね。
また、130歳以上生きるためには同世代だけではなく下の世代とも楽しく付き合っていかないといけないと感じます。そのころには同世代はみんな死んでますからね(笑)
下の世代にも付き合う価値がある人間になって行こうと思います(^^♪
まとめ
110歳まで生きた人は100歳時点で日常生活動作(ADL)が自立している。
⇒100歳になっても日常生活機能を保つことが超重要
日常生活機能を保つには
・認知機能を保つことが超重要
・フレイルにならないことが超重要
・サルコペニアは、加齢に伴う骨格筋量と骨格 筋機能が低下した状態であり、フレイルの原因となる。
⇒やはり一日1万歩を続けていきます。